当研究室では、材料や構造および周囲環境とのインタラクションにおける非線形性、受動的性質とエネルギ変換機構を巧みに利用した「賢い構造システム」の研究を行っています。
現在のテーマ
構造物の健全性を「通常の供用を続けながら」「常時」監視・診断するための技術です。そのために構造物中にセンサを常置あるいは埋め込んでおき、取得したデータを連続的に解析評価することで構造物中に生じた損傷を検知・監視します。
構造ヘルスモニタリング×振動発電
構造物表面に貼り付けた圧電素子によって振動発電を行いながら、収穫したエネルギーを再び圧電素子に戻して超音波として構造物内に放射し、生起された弾性波と損傷部での非線形効果によって健全性診断を行うセルフパワード超音波センサ技術を開発しています。
構造物検査ドローン
構造物表面に吸着して検査を行うための小型ロボットの開発を行っています。吸着した状態で自走、あるいは空中移動を経て目標箇所に到達し、カメラや振動センサを用いて構造物の健全性に関するデータを取得します。
機械学習技術を用いた機械の異常検知・診断
稼働中の機械から取得した様々な情報を用いて機械の異常を検知・診断する技術の研究を行っています。自己組織化マップ、サポートベクトルマシンなどの機械学習技術を用いています。
非線形圧電インピーダンス変調法
き裂や接着部の剥離など面接触部の変化や成長を伴うタイプの損傷を検出する技術に関する研究です。 構造物に貼付した圧電素子を高周波電圧源で加振しその際に流れる電流を観測することによって,ボルト継手の緩みやクラックなど,面接触タイプの損傷に起因する波動伝播特性の変化を電流応答の振幅変調および位相変調として取り出すことができます。現象のモデリングと解析,疲労き裂進展のモニタリングへの適用,損傷位置の検出のほか,動的機械要素への展開も視野に入れています。
熱伝導ホログラフィ
コンクリート構造物表面を撮影した熱画像から,構造物内部に生じた空洞やひび割れの形状と深さを検出するための画像解析手法に関する研究です。表面の温度データから内部の温度及び熱流束分布を推定する局所逆解析を行い,欠陥の3次元形状を復元する「熱伝導ホログラフィ法」の確立を目指します。非定常データの取り扱いが可能になるよう拡張した後,アクティブ加熱法への展開を行います。(休止中)
構造ヘルスモニタリング分野のその他の技術
構造物の常時振動応答を用いた局所フレキシビリティの評価、振動応答の波動成分への分解に基づく損傷評価手法などの研究を行いました。
機械の性能を追求していくと、振動がボトルネックになることが多々あります。また、地震によって引き起こされる激しい振動は災害をもたらし人間の命や財産の毀損に直結します。このように「害」となる振動を取り除き、さらなる性能向上の達成や災害からの早期復旧力(レジリエンス)の向上を目指す研究を行っています。
地震中に昇降するエレベータの振動制御
現在日本では地震時にエレベータを使用することはできませんが、避難救援活動に使うことができれば大変有利です。そこで振動を抑制することで使用可能になる条件を抽出し、その制御方法を提案しています。(詳しくはこちら)
振動発電を行う免震デバイスの開発
停電が起きた際にも継続時間の長い長周期地震動や余震に対して、自己給電することでアクティブ制御を行うことのできる免震装置を提案しています。(詳しくはこちら)
環境中に放出される熱エネルギー、電磁エネルギー、力学的エネルギーなどの未利用エネルギーを電気エネルギーに変換して回収・利用することを energy harvesting あるいは energy scavenging といいます。このうち、振動の力学的エネルギーを利用するものを振動発電 (vibration energy harvesting) といいます。
非線形振動エネルギーハーベスティングデバイス
非線形振動子を用いた共振型の振動発電を研究しています。この種の energy harvester
では振動源に振動子を共振させることが重要ですが,通常の線形振動子では共振帯域が狭く振動源の変動に弱いという問題があります。そこで振動子に非線形特性を付与し,さらにリミットサイクル振動子の強制引き込みの原理を応用することにより共振域の拡大を図ります。
構造物に貼付した圧電素子による振動発電
薄肉構造物の表面に貼付した圧電素子による振動発電についてモデル化を行い、その発電効率について評価しています。
テンセグリック相転移構造
介護動作サポートウェアの開発
介護動作における腰部負担軽減を目的とした衣服を開発しています。上体前傾時に腰椎にかかる過大な圧縮力を軽減するサポート力を提供します。現在は衣服としての使い勝手がよく自然なサポート力が得られるように様々な改良を行っています。(休止中)
終了あるいは休止中のテーマです。
スマート構造技術を用いた海洋波振動発電
津波災害から沿岸地域を守るために津波の早期警戒警報の高精度化・高信頼化が求められており,そのためには津波観測のためのGPS波高計ネットワークの高密度の設置が必要とされています。現状のGPS波高計ブイは大型で高コストなものですが,これを可搬サイズで軽量かつシンプルな構造を持つものにできれば波高計設置のコストが大幅に下がり,これまでよりはるかに高密度な展開運用が可能になるでしょう。
本研究では,小型GPS波高計への搭載を当面の目標として,小型軽量で信頼性の高い海洋波発電デバイスを開発することを目標にしています。GPS波高計を動作させるには最低でも50ワット前後の電力を0.05 Hzから0.5 Hzというごく低周波の海洋波振動から引き出す必要があります。そのためには波の運動を追従性のよいフロートによりうまく相対運動に変換し,その運動を用いて高効率の発電を行う仕組みを考えなければなりません。本研究では,スマート複合材料,スマートセンサ・アクチュエータ,展開構造などのスマート構造技術をフル活用し,さまざまな材料,機構,構造を旨く組み合わせることによりこれを実現することを目指して研究を行っています。(休止中)
ネガティブパワーアシスタンス
福祉・介護機器としてのパワーアシスト装置の開発が活発に行われていますが,操作者の筋力を常時アシストするフルパワーアシストシステムではエネルギ消費が大きく小型化軽量化が困難です。本研究では操作者の疲労低減にフォーカスし,筋肉の等尺性収縮期および伸張性収縮期のみをアシストすることによりエネルギ消費を大幅に低減させることが可能なセミアクティブアシスト装置の実現を目指します。(終了)
歩行運動の計測と解析
加速度センサ・角速度センサ・地磁気センサを有する無線センサユニットを下肢部に装着し,歩行時の下肢の運動を計測することによって,アクティビティモニタリングやフィットネス,介護医療などに役立てようとする研究です。収録データから個人の歩行特徴を抽出・学習する技術を開発するほか,計測された歩行運動の動力学的理解のために,準受動2足歩行機械の非線形力学特性の解析を行います。現状は無線センサでの計測・バイオメカニクスに基づくデータ解析・2足歩行機械の非線形解析から,高齢者のつまずきリスクの評価への展開を行っています。(終了)
形状記憶合金の高速応答のモデリング
超弾性形状記憶合金は,応力誘起マルテンサイト変態による応力飽和特性,大きな回復ひずみ,比較的大きなヒステリシス減衰を持つため,振動絶縁および衝撃絶縁材料としての利用が期待されます。これらの用途において形状記憶合金は10^-1/s〜10^3/sの高ひずみ速度域での変形に晒されますが,この領域においては,変態潜熱の放出/吸収による合金温度の非定常変化,変態ひずみ速度の増加による摩擦応力の増加といった特徴的な現象が見られます。研究では,これらの挙動を適切に表現でき,かつ実応用に供しやすいモデルの構築を目指しています。(終了)