研究企画書作成のすすめ

M2文元君とミーティング。研究の後半1/3の到達目標と研究計画の再確認。

 

以下に書くことは,学部生,院生を問わず,お勧めする,否,是非やっていただきたいことです。それは「研究企画書の作成」です。

研究企画は,(a) 研究のポジショニング,(b) 研究目標の設定,(c) 研究計画からなるべきものです。(a)は,過去,現在,未来の3つに分けて考えます。これらを,

  • (a1) 過去に対するポジショニング
  • (b) 目標(大目標・サブ目標)の設定
  • (a2) 現在に対するポジショニング
  • (a3) 未来に対するポジショニング
  • (c) 研究計画

の順に考えていきます。もちろん,順に,といっても,本当にシリアルに考えられるものではなく,あくまで目安です。

 

(a1)過去に対するポジショニングとは,これまでの当該分野における国内外の研究の系譜の中で,自分の研究を如何に位置付けるのか?これまでの技術の何 が不足なのか,どんな問題にフォーカスするのか,いわゆる研究背景と研究動機ですが,自分の立ち位置を決める最も大切な部分です。

 

(b)はできるだけ具体的に考えなければなりません。研究期間が終了したとき,つまり卒論や修論をまとめ終えたとき,どのようなことが達成されていれば研究が成功したと言えるでしょうか。(a1)がしっかり考えられていれば大きな目標は明らかになっているはずですから,今度はそれを実現するために達成すべ き,より具体的なサブ目標の連鎖にかみ砕いていきます。大目標をルートとする樹形図を描いて考えるとよいと思います。これはすなわち,大目標の解決に向けた「攻め方」(ロードマップ)を考える作業に他なりません。解決すべき課題の連鎖が挙がったら,最も本質と思われる課題の連鎖を3つ程度にまとめ,それぞれを簡潔な文章で表し箇条書きにします。典型的には,次のような形になるでしょう。(参考:内崎・佐藤,創造的技術者のための研究企画,日刊工業新聞社)

  • 「Aという価値あることを解決する」(ニーズに基づいた大目標の記述)
  • 「そのためにBという新しい技術・ものを実現する」(生み出すべきシーズ)
  • 「そのためにCという手段を講ずる」(実現手段)

 

(b)までをしっかり考え抜くと,あとは自ずと明らかになります。(a2)の現在に対するポジショニングとは,自分の研究の新規性・独自性を定義すること に他なりません。これには,解決すべき課題そのものが新規である場合と,課題そのものは既出だが「攻め方」「実現手段」に新規性・独自性がある場合とがあ ります。そして,この研究が目標を達成したとき社会にどんなインパクトを与えるのか,誰にどのような恩恵を与えることができると期待されるか,つま り研究の意義と期待される成果,これが(a3)の未来に対するポジショニングです。

 

最後に,(c)はロードマップに沿っての具体的な研究計画(タスクの配置とスケジューリング)です。何か特別な資材や機材が必要な場合は,粗見積もりと共にここに記述します。ここで犯しやすい誤りは,全てのタスク(やるべきこと)を直列に配置してしまうことです。例えば文献読みといっても英語の文献を一日中読んでいる訳じゃないですよね!疲れたら実験装置の検討をやってみるとか。1日は長いのです(8時間くらいは研究に割けるでしょう)。1日を2分割(午前/午後とか,おやつ前/おやつ後とか)で考えれば常時2つのタスクを走らせることができますから,並列化すべきところは並列化して考えましょう。

 

こうやって書き上げる企画書ですが,もちろん研究を遂行する過程で何度もアップデートすることになるでしょう。大体2ヶ月に一度は自分の進捗を振り返り, 必要であれば軌道修正します。これらは日々のミーティングで議論していきましょう。また,ミーティングでの進捗報告におけるアウトプットは,企画書に記述した研究計画に沿って,どの達成目標に対して何を行ったか,その結果を示すマテリアル(例えばグラフなど),結果の分析(結果が目標に照らして十分であったかについての意見とその理由/不十分なら次に何をすればよいと考えているか),を整理するようにします。

 

以上のことを,(特に学部生やM1は)研究に着手して様子がわかってきた今の時期に徹底的に考えておくと,進むべき方向をはっきり定めることができ,研究効率も上がります。もちろん,個人で熟考するだけでなく,チームメンバーや友人と情報交換してディスカッションするのもよし(もっと研究を日常の話題に!),いったん書いたものを交換して批判しあってもいいでしょう。(ついでに言うと,これは自分の考えを整理し人にわかりやすく話す訓練そのものですから,就職活動にも役立つでしょうね。)

 

研究企画書のフォーマット
研究企画書.doc
Microsoft Word 48.0 KB

増田 新

京都工芸繊維大学

大学 機械工学系・教授・ものづくり教育研究センター兼務

Twitter @artmas01

Twitter @kiriki_t