研究テーマ

知的構造システム研究グループでは,材料や構造および周囲環境とのインタラクションにおける非線形性,受動的性質とエネルギ変換機構を巧みに利用した「賢い構造システム」の研究を行っています.

現在のテーマ

構造ヘルスモニタリング・状態モニタリング

  • 非線形波動変調法による平板構造物の損傷の検出と定位
  • 非線形圧電インピーダンス変調法によるボルト緩み検出
  • 非線形圧電インピーダンス変調法による機械要素の健全性診断
  • 近接場音波浮上の基礎研究
  • 構造物検査UAV用センサの開発
  • 老朽化社会インフラ検査法の開発
  • 機械・構造物の余寿命予測のための機械学習モデルの研究

振動発電

  • 自励発振特性を付与した非線形振動子による圧電型広帯域振動発電
  • 自励発振特性を付与した非線形振動子による電磁型広帯域振動発電
  • 新しい原理に基づく広帯域振動発電デバイスの開発
  • 磁気浮上型振動発電

振動制御

  • 等価動剛性に基づく非線形動吸振器の設計法の研究
  • 移動インピーダンス源を有する1次元構造物の波動解析と制御

人体のダイナミクス解析とアシスタンス技術

  • 介護動作サポートウェアの開発
  • 慣性センサを装着した履物による歩行動作のモニタリング

構造ヘルスモニタリング

構造物の健全性を「通常の供用を続けながら」「常時」監視・診断するための技術です。そのために構造物中にセンサを常置あるいは埋め込んでおき,取得したデータを連続的に解析評価することで構造物中に生じた損傷を検知・監視します.本研究室では,構造物の常時振動応答を用いた局所フレキシビリティの評価,振動応答の波動成分への分解に基づく損傷評価手法などの研究を行っています.

非線形圧電インピーダンス変調法

き裂や接着部の剥離など面接触部の変化や成長を伴うタイプの損傷を検出する技術に関する研究です。 構造物に貼付した圧電素子を高周波電圧源で加振しその際に流れる電流を観測することによって,ボルト継手の緩みやクラックなど,面接触タイプの損傷に起因する波動伝播特性の変化を電流応答の振幅変調および位相変調として取り出すことができます。現象のモデリングと解析,疲労き裂進展のモニタリングへの適用,損傷位置の検出のほか,動的機械要素への展開も視野に入れています。

Vibration-based energy harvesting device

環境中に放出される熱エネルギ,電磁エネルギ.力学的エネルギなどの未利用エネルギを電気エネルギに変換して回収・利用することを energy harvesting あるいは energy scavenging といいます。研究では振動子を用いた共振型の振動発電を扱います。この種の energy harvester では振動源に振動子を共振させることが重要ですが,通常の線形振動子では共振帯域が狭く振動源の変動に弱いという問題があります。そこで振動子に非線形特性を付与し,さらにリミットサイクル振動子の強制引き込みの原理を応用することにより共振域の拡大を図ります。

スマート構造技術を用いた海洋波振動発電

津波災害から沿岸地域を守るために津波の早期警戒警報の高精度化・高信頼化が求められており,そのためには津波観測のためのGPS波高計ネットワークの高密度の設置が必要とされています。現状のGPS波高計ブイは大型で高コストなものですが,これを可搬サイズで軽量かつシンプルな構造を持つものにできれば波高計設置のコストが大幅に下がり,これまでよりはるかに高密度な展開運用が可能になるでしょう。

本研究では,小型GPS波高計への搭載を当面の目標として,小型軽量で信頼性の高い海洋波発電デバイスを開発することを目標にしています。GPS波高計を動作させるには最低でも50ワット前後の電力を0.05 Hzから0.5 Hzというごく低周波の海洋波振動から引き出す必要があります。そのためには波の運動を追従性のよいフロートによりうまく相対運動に変換し,その運動を用いて高効率の発電を行う仕組みを考えなければなりません。本研究では,スマート複合材料,スマートセンサ・アクチュエータ,展開構造などのスマート構造技術をフル活用し,さまざまな材料,機構,構造を旨く組み合わせることによりこれを実現することを目指して研究を行っています。(休止中)

介護動作サポートウェアの開発

介護動作における腰部負担軽減を目的とした衣服を開発しています。上体前傾時に腰椎にかかる過大な圧縮力を軽減するサポート力を提供します。現在は衣服としての使い勝手がよく自然なサポート力が得られるように様々な改良を行っています。

ネガティブパワーアシスタンス

福祉・介護機器としてのパワーアシスト装置の開発が活発に行われていますが,操作者の筋力を常時アシストするフルパワーアシストシステムではエネルギ消費が大きく小型化軽量化が困難です。本研究では操作者の疲労低減にフォーカスし,筋肉の等尺性収縮期および伸張性収縮期のみをアシストすることによりエネルギ消費を大幅に低減させることが可能なセミアクティブアシスト装置の実現を目指します。(終了)

歩行運動の計測と解析

加速度センサ・角速度センサ・地磁気センサを有する無線センサユニットを下肢部に装着し,歩行時の下肢の運動を計測することによって,アクティビティモニタリングやフィットネス,介護医療などに役立てようとする研究です。収録データから個人の歩行特徴を抽出・学習する技術を開発するほか,計測された歩行運動の動力学的理解のために,準受動2足歩行機械の非線形力学特性の解析を行います。現状は無線センサでの計測・バイオメカニクスに基づくデータ解析・2足歩行機械の非線形解析から,高齢者のつまずきリスクの評価への展開を行っています。

熱伝導ホログラフィ

コンクリート構造物表面を撮影した熱画像から,構造物内部に生じた空洞やひび割れの形状と深さを検出するための画像解析手法に関する研究です。表面の温度データから内部の温度及び熱流束分布を推定する局所逆解析を行い,欠陥の3次元形状を復元する「熱伝導ホログラフィ法」の確立を目指します。非定常データの取り扱いが可能になるよう拡張した後,アクティブ加熱法への展開を行います。(休止中)

形状記憶合金の高速応答のモデリング

超弾性形状記憶合金は,応力誘起マルテンサイト変態による応力飽和特性,大きな回復ひずみ,比較的大きなヒステリシス減衰を持つため,振動絶縁および衝撃絶縁材料としての利用が期待されます。これらの用途において形状記憶合金は10^-1/s〜10^3/sの高ひずみ速度域での変形に晒されますが,この領域においては,変態潜熱の放出/吸収による合金温度の非定常変化,変態ひずみ速度の増加による摩擦応力の増加といった特徴的な現象が見られます。研究では,これらの挙動を適切に表現でき,かつ実応用に供しやすいモデルの構築を目指しています。

増田 新

京都工芸繊維大学

大学 機械工学系・教授・ものづくり教育研究センター兼務

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